京都で結婚するなら

京都で結婚するなら

もう恋なんて

「君は悪くない。”僕のわがまま”だから・・・。」

そう言う彼はとても悲しそうでした。

ほかに好きな人が出来たって言われるほうが良かった。

その理由はあんまりだよ・・・
いちばん聞きたくなかった。

結婚を考えて、告白したのに・・・。

もう恋愛はしない。
結婚もしない。
私は自分ひとりで生きていく。

そう覚悟を決めました・・・。




あの大失恋から10年近くが経過しました。

来週入籍します。
とうとう結婚することになりました。

この私が・・・
結婚は完全にあきらめていたのに。


今日はめずらしく一人です。
ううん、デンさんに頼んで一人にしてもらいました。

デンさんが私の結婚相手です。
デンさんは明日から2日間出張です。
だから今日は準備に充ててって自分から言いました。

この頃、結婚準備で毎日ずっと一緒だったから、
ひとりになって少し冷静に見つめおしたくなったんです。
でもマリッジブルーなんかじゃありません。

“私はデンさんと結婚する!”

この気持ちは揺らいでいません。
デンさんとなら私は幸せになれるという確信すら感じています。


デンさんと出会って約7か月。
デンさんと出会う前の私は7か月後の今ごろ、まさか自分が
結婚に向かって突き進んでいるなんて想像できていませんでした。

そしてその相手がデンさんみたいな男性だなんて・・・。

ほんとうに奇跡のようなお話です。

私は今の気持ちを大切にしたい。
来年も、10年後も20年後も
この先ずっと忘れたくない。

だからここに残したいと思います。
そのために今日は一人になりたかったんです。


独りだった37回目の誕生日

話はちょうど1年前にさかのぼります。
記念すべき37回目の誕生日でした。

ほんとは記念するほどでもないんですけど、
昨年とかわらないひとりの誕生日のはずでした。

じつはその少し前に友人が結婚して、大学時代に仲のよった
メンバーは私以外全員が“亭主もち”になってしまいました。

そんな私をかわいそうに思った優しい(?)友人たちが
誕生日会を開いてくれたんです。

女子会と呼ぶには、少し勇気がいる“元少女”たちが
いまだ独身の私を慰めてくれる会のはずでした。


ところが楽しいはずの女子会は、会話のまっ最中に旦那や子どもから
電話やLINEが入ってしばしば中断してしまいます。

いつしか女子トークは、“結婚がどれほどいいものか”、
そして旦那と子ども自慢を順番に聞く会にかわり、最後はみんなから

「あんたも早く結婚しなさい!!!」

と説教されてしまうというなんだか
とても悲しいエンディングになってしまいました。

友人たちは10年前の大失恋のことを知りません。
もちろんその理由のことも・・・。


価値観結婚観の違い

昨年の今頃の私は仕事でとても忙しい毎日を送っていました。
所属する部内では大きな仕事を任されていました。
上司や部下からはそれなりに信頼もされていたと思います。

毎日朝早くから夜遅くまで仕事漬けでした。
まわりの男性と言えば、会社や得意先の人ばかりで
出会いらしい出会いもありません。
みんな目標が同じ戦友です。

恋愛を望んでいない私にはその環境は
かえって仕事に没頭できて心地よいものでした。

そのかわり、休みの日には河原町へおいしいものを食べに行ったり、
旅行やライブでリフレッシュして私は自分の人生を楽しんでいました。

仕事も頑張るけれど、スキルアップや自分磨きも忘れない
・・・そんな日々を送っていたのです。
ただその中に恋愛は入っていませんでした。


でも誕生日の女子会以降、状況が一変します。

仕事帰りや休みの日は、おせっかいな友人に連れられて
飲み会や街コンに参加しました。
婚活パーティーに行ったこともあります。

でも出会う男性のほとんどが、とても頼りなく見えてしまうのです。
子どもっぽいというかすごく幼稚でした。

話す内容も中身がほとんどなくてつまらないし、夢を語り出すと
勝手に自分に酔いだして、聞いているこっちが恥ずかしくなります。

付き合う価値もない・・・そんなことも考えてしまいました。
それに同年代だと収入は私のほうが上でした。


そんなときつい思ってしまうんです。
結婚したら私が相手を養うの?
せっかく貯めた貯金なのに?
休みの日はどこでもついてきて・・・

自分の時間がなくなっちゃう!!!

これまで仕事に頑張ってきた私へのご褒美を頑張ってなさそうな男性に
横取りされるようで納得できません。

そんなことを思う自分がとても嫌な人間にも思えて、自己嫌悪に陥りました。
紹介してくれる友人も、なんだかゴメンねと言ってくる始末・・・。

やっぱり私はひとりで生きて、ひとりで死んでいくんだ。

そんなことも考えるようになっていました。


それでも、友人たちは私の知らないところで作戦を立てていたらしくて
”次はあの男性!”、”次はあのイベント!”なんて話していたそうです。

でも全然いい人がみつからなくて友人たちもがっかりしていました。
そして最後の手段として、あるところへ連れて行かれたのです。


それは四条通りにある結婚相談所でした。
阪急烏丸の駅から歩いて1分のビルでした。

ここで私は運命の出会いをします。
赤い糸の男性ではありません。
私の担当になったカウンセラーの佐竹さんです。

私は初対面だというのに、これまでいい人に出会えなかった
自分の不幸ぶりを佐竹さんに訴えました(笑)
今思うと、佐竹さんが話しやすい雰囲気の女性だったからでしょう。

周りからは結婚しろ、結婚しろって言われるけれど出会う男性は
子どもっぽかったり、年収は私のほうが多いんですよ!
自分にピッタリの人とか全然いないんです!!

私ってついてないって思いませんか?

友人たちの熱意に押されて結婚相談所まで来ましたが
内心では結婚はあきらめています。
それなのに佐竹さんに不幸アピールなんておかしな話です。

すると佐竹さんはにっこり笑って言いました。

「ひぃさん(私のこと)はぜんぜん不幸じゃありませんよ。
結婚相談所に来る女性はもっと思いつめたような方もいらっやるんですが、
ひぃさんみたいにそれだけパワフルなら大丈夫!
きっといい人がみつかりますよ。私も一生懸命にお手伝いします!」

そして1時間のカウンセリングが始まりました―

そこで1時間後には自分の『考えが180度変わる』という体験をしたのです。

最後に佐竹さんは言いました。

「価値観が同じ人なんていません。育ってきた環境が違うんです。
だから価値観が違うのは当たり前!
価値観は違うけれど、結婚してからどんな家庭を築いていくのか?
大切なのは”結婚観”なんですよ!」

私も正直今さら、自分の価値観を変えることなんてできません。
価値観は私の生きてきたこれまでの積み重ねなんですから。

でも、”どんな結婚をしたいか?”
”結婚してからの生活をどうしたいか?”
これは相手と相談できることです。
これからのことなら歩み寄ることもできます。
お互いに合わせることも無理じゃない!
それなら私も結婚をあきらめなくてもいいのかな?

そう思えました。

そこから佐竹さんと二人三脚で婚活が始まったんです。


まずは自分の結婚観について見つめなおしました。
でもあんまりよくわかりません。
これまで結婚についてよく考えたことはなかったし・・・・。
芸能人の結婚式を見て、あぁこんなのいいなぁって思ったくらいです(笑)

・結婚してから譲れないこと
・大事にしたいこと
・実現したいこと
・叶えたいこと・・・

結婚してからのことを考えてみるといろいろなことが浮かんできます。

私ってほんとはこんなことを考えてたんだとビックリすることも出てきました。
そのなかでも一番大切なことはなんだろう?

あったかい家庭・・・かな?

ありふれているかも知れないけど。
頑張って働いて帰ってきたときにホッとできる場所。

寝るために帰るだけの今のひとり暮らしじゃなくて、
帰れば笑顔になれて元気が出てくるパートナーがいる場所・・・。

そんなイメージが浮かびました。
今一瞬頭に浮かんだ人は、どんな人だっただろう?

イケメン?
お金持ち?
優しい性格?

うーん、まだはっきりしない・・・。


私の結婚観がまとまらない状態だったのに、男性からお見合いの
申し込みがあったと佐竹さんから連絡がありました。

「男性と話をすることで自分の結婚観が明確になることもありますよ。」

佐竹さんの言葉に背中を押されて、会うことにしました。

この結婚相談所のお見合いはカウンセラーさんも同席してくれます。
初対面だとなかなか“素”が出にくいけれど、
共通の知り合いである佐竹さんがいてくれると安心感があります。

場所はお互いが便利な京都駅。
ホテルのロビーで待ち合わせ。
顔合わせからしばらくは佐竹さんが仕切ってくれます。

お互いに顔の緊張がそろろろほぐれてきたかな~というタイミングを
見計らって、佐竹さんが切り出しました。

「ではあとはお二人きりで話してください。
あ、でもわたしの悪口はダメですよ(笑)」

そう言い残して歩いていく佐竹さんにあっけにとられながら、
二人で顔を見合わせて吹き出した。
おかげで緊張せずに話すことができました。

そのあと続けて別の男性2人とお見合いしたけれど、
どの方とも付き合うまでいきませんでした。
ご縁がなかったんだと思います。

やっぱり結婚は無理かな・・・


彼との出逢い

「来週、京都駅のホテルでお見合いパーティーがあるんですが、
ひぃさんも参加してみたらどうですか?」

参加資格は30代だったらOKというもので、
私も一応は条件は満たしています。

断る理由も浮かばず、まが自分の考えがまとまらないまま
パーティーに参加することになりました。

参加者は同年代、しかも真剣に結婚を考えている人ばかりです。
ひやかしの参加は主催者側が断っているそうで
完全本気のお見合いパーティでした。
私のように初参加もいれば、常連(?)もいるそうです。

以前友人と参加したふざけたお見合いパーティとは比べものになりませんでした。


パーティーの前半は、1対1のトークタイムで5分弱で次々に相手が替わりました。
プロフィールカードを参考に自己紹介し合います。

話しのうまい人も下手な人もいて、”これってパーティに慣れてるとか
女性慣れしてるとかが出るのかな”と勝手に思いながら会話しました。

パーティーの後半はフリータイムで、気になった人とゆっくり話します。
私は2人から声をかけてもらって話すことができました。

そろそろ終了の時間・・・というときになってもう一人に声をかけられました。


その男性は、前半の自己紹介のときにはあまり話してくれなくて
ずっと私から質問した人でした。

“あと5分でフリータイム終了です”
アナウンスが入ります。

男性はとても緊張しているように見えました。
それでも今度は積極的に話してくれようとしています。
女性と話し慣れていないんだなと思いました。
でも一生懸命話してくれる姿に誠実さを感じました。

そして終了の合図。

最後にカードが配られ、気に入った名前を書きます。
今回私は残念ながら、ピンとくる人はいませんでした。
だから名前を書かずにカードを返却しました。

マッチングは翌日です。
その場で
“お願いします”“ゴメンナサイ”
のきまずい光景を目にしなくてよかったです。

みんな本気なだけに、振るのも振られるのも辛いと思います。
私だったらどっちパターンも嫌だと思いました。

「どうして誰も書かなかったんですか?」

結果を聞きに行った私を佐竹さんがにらみます。

「だ、だって、いい人が・・・。」

「あの短時間でいい人かどうかはなかなかわかりませんよ。」

「気になった人と改めて会ってお話するきっかけです。
本当に気になる人はいなかったんですか?」

「気になる人はいましたよ。
タイプじゃなかったですけど・・・。」

「誰ですか?」

なんて言ったかな・・・。
バッグの中のプロフィールカードを探しました。

「あ、この人です。」

そのカードを見て佐竹さんが、悲しそうな顔をします。

「その方はひぃさんをお気に入りのお相手に選んでおられます。
お気に入りは3人まで書いていいんですが、
書いておられるのはひぃさん一人のお名前だけですね。」

えっ!?前半と後半合わせて10分も話してないのに?
どちらかというとマイナスの印象しか・・・。
なのにどうして?
?・?・?・・・

「でもタイプじゃないんだったら、あちらには
マッチングしなかったと伝えておきます・・・」

「あ、ちょっと待ってください!」

「いい方だったでしょう?」

「まだよくはわからないんですけど・・・。」

「とても真面目で誠実な方ですよ。あちらもパーティーは初めてでした。
ひぃさんも気になったのなら、もう一度会ってみるのをおすすめします。」

「会います!」

「会わせてください!」

何故だか思わず口に出していました。

「承知しました。」

佐竹さんはくすくす笑っていました。

こうして、その男性とあらためてお見合いをすることになります。
その男性が、約7か月後に結婚することになるデンさんです。

お見合い当日、待ち合わせ場所に30分ほど前に着きました。
バスだったので早めに出たら、予想以上に早く着いてしまいました。
とくに緊張はありません。
お見合いも4回目ともなると、慣れてしまうようです。


今回は落ち着いて相手の男性を観察しよう!

今回は相手のリクエストで、ファミレスでした。

私はどこでもよかったのでOKしましたが、
ファミレスでお見合い?と正直疑問を感じました。

まわりに人がいっぱいいるんじゃないの?
会話を聞かれたらやだなぁ。
あーぁ、今回もダメなのかなぁ?

少し不安になりました。

さすがにこんなに早いと佐竹さんも来てないだろうな。

店内に入ると、いらっしゃいませーの元気な声とともに
レジにいた女性スタッフが近づいてきます。
キッチンからもいらっしゃいませーの声が聞こえてきました。

「何名様ですか?」

「3人ですけど、まだ一人です。」

「お席は禁煙・喫煙どちらになさいますか?」

こんなときって多分禁煙よね?

「禁煙席をお願いします。」

「かしこまりました、どうぞ。」

案内されて店の奥に進みます。
ほぼ満席でした。
土曜日の4時過ぎです。

店員についていきながらふと目をやると
男性が一人で食事していました。

遅いランチなのかな?

通り過ぎようとして、何か気になったので男性の顔をよく見ました。

えっ!あれっ!?
パーティーの男性だ!

そう、今日のお見合い相手です。
向こうも気づきます。
目が合いました。

このまま店員さんについていくか一瞬迷いました。

ここは知らん顔して通り過ぎてあげたほうがいいのかな?

迷っていると男性が申し訳なさそうに会釈します。
これで気づかないふりはできなくなりました。

あ、待ち合わせの人がここにいます!

私はあきらめて
店員に告げて男性の向かいに座りました。
男性は海老フライの定食を食べていました。

「は、早いんですね。」

「はい。」

「海老フライですか?」

「はい、スミマセン。

すぐに食べてしまいます。」

「あ、いいですよ、
まだ約束の時間にはずいぶんありますから・・・。」

「そうなんです、だから先に食べてしまおうと思って。」

お見合いの前に腹ごしらえしようと思ったのかな?
それならすごい気合いの入りようだ。
腹が減ってはなんとやらって・・・。

「このあと授業なので今しか時間がないんです。スミマセン。」

そうだ、この人、塾の先生だった!

「もうすぐ夕方の授業が始まります。
今日はお見合いもあるから早めに食べてしまおうと思ったんですが・・・。」

わたしが早過ぎたんだ!!!

「ご、ごめんなさい。」

「いえ、僕こそスミマセン。
こんな時間に、しかも大事なお見合いの前に食事なんて軽率でした。」

「片づけてもらいます。」

そう言ってテーブルの上にある呼び出しのボタンに手を伸ばします。

「いいですよ、お仕事なんですから。
私もなにか頼んでいいですか?」

「はい、どうぞ。」

デンさん、6歳上の43歳。
塾講師。
京都市内に4校展開している教室のひとつを任されています。
担当は数学と理科。中学から高校までみているそうです。
ひとのよさそうな人だなぁ。

やさしい先生なんだろうな。

そんなことを考えていたら
佐竹さんが入ってきて目を丸くしています。

「スミマセン。僕のせいで先に始まっちゃいました。」

事情を説明すると佐竹さんは吹き出しました。

「そうでしたか。私は必要なかったですね。
それではもう少し、デンさんのお仕事が始まるまで
お話ししてください。」

そのあともデンさんと楽しい話ができました。
デンさんも今日はリラックスしているようでした。
私も冷静にデンさんの観察ができました。
1時間ほど話してデンさんは名残惜しそうに授業に向かっていきました。


翌日、結婚相談所の事務所で私は佐竹さんに気持ちを伝えました。

デンさんとお付き合いしたいと思います。

佐竹さんはにっこり微笑みます。

「デンさんは昨日、ファミリーレストランを出て、
すぐに交際したいと電話してこられましたよ。」

”今終わりました!
ひぃさんさえよければ、結婚前提でお付き合いさせてください!”

こうして私はデンさんと付き合い始めました。


あなたと付き合ってでも

塾の授業は平日の夕方から夜、そして土日は午後一番からです。
私は土日が休みです。
そこでできるだけ土日の朝から出かけるようにしました。
朝早く出ればどこも空いていてゆっくりできます。
そして混み出す前に帰って、お昼を一緒に食べたらデンさんは授業に行きました。

それにお互いの家がとても近かったので、平日私が早く帰れた日は
彼の家に行って夜食なんかを用意してあげました。
デンさんは日付が変わるころ帰ってきて、彼が夜食を食べるのを見ながら、
その日あったことを話しました。

デンさんは出会った頃は、無口な人だと思っていましたが、
じつはおしゃべりでした。
あとで聞いたら、パーティーのときはただ緊張していだけだそうです。

それ以外にも、デンさんのことがいろいろとわかりました。

猫より犬が好き。でも飼ったことはない。
時間に正確。授業に遅刻した生徒はその日1日問題を解く係に指名。
だからみんなデンさんの授業は遅刻しないらしい。

性格はとてもまじめで誠実、でもめんどくさがり。
一人だと休日は家でゴロゴロ。
野球が好き。サッカーが好き。スポーツが好き。
でも自分ではやらない。観戦専門。

塾では先生からも父兄からも信頼されている。
でも子どもからはいじられキャラなんだとか。

そしてデンさん自身も子どもが大好きでした・・・。


付き合ってしばらくしてからふと思うことがありました。

結婚相談所で知り合った場合って、付き合う=結婚前提なの?

デンさんは佐竹さんに結婚前提で・・・と言ったようだけど、
私は直接デンさんからそこについては確認されていないし、
私自身も結婚について態度を明確にしていません。

デンさんとはまだお互いの結婚観について話をしていないので、
いいも悪いも判断しようがない状態です。

でも今、あらためてデンさんに結婚についていろいろ話したら、
私の気持ちが固まったと勘違いされそうで怖くて聞けません。
こういうことは付き合う前に確認して、その上で付き合うものだったのかな?

心配になって佐竹さんに聞いてみました。

「そうですね。そのあたりをはっきりしてから付き合う方もいますし、
そうでない方もいます。結婚相談所で知り合っても普通の恋愛のひとつとして
そんなに堅苦しく考えなくていいですよ。」

でもお互い結婚したいと思っていますから、気持ちが決まればあとは話が早いです。
デンさんに今ひぃさんが考えていることを素直に伝えてみたらどうですか?」

次の土曜日、デンさんに話しました。
その日は担当の授業が夜だけだったのでゆっくりいろいろ話せました。
デンさんの結婚観を教えてもらいました。
もちろん私の結婚観も。
だいたい同じでお互いほっとしました。

「僕たち、幸せな結婚生活が送れるんじゃないかな?」

付き合い始めて4か月が経っていました。

佐竹さんに報告しました。

「良かったですね。おめでとうございます。」

「結婚に向けて話を進めたほうがいいですか?」

「お二人のタイミングもあると思いますのでじっくり相談してください。
ただ先延ばしにしてもいいことはあまりありませんよ。
”結婚は勢い”とも言いますしね。」

そうか、二人に障害がないんだったら結婚に進まないといけないんだ。
このままの関係をずっとっていうわけにはいかないんだな・・・。

結婚が一気に現実味を帯びてきて、暗い気持ちになりました。


あなたを想い逃げてしまった私

私は子どもが産めません。

若いころに中絶の経験があります。
誰にも言わず、会社にも内緒でした。
当時は初めて大きな案件を任されていてとても大事な時期でした。
休日に日帰りで手術を受けて、翌日からいつもの通り出社しました。
食事や睡眠にかける時間も惜しいほど仕事に没頭しました。
堕ろしたことを忘れてしまいたい気持ちもあったのも確かです。
お腹に少し痛みもありましたが、市販薬で紛らわして働きました。

頑張ったかいあって仕事は大成功でした。
それからしばらくしてお腹に激痛が走りました。
仕事帰りに病院にいくとすぐに入院になりました。


そして医師にもう子どもが産めないと告げられました。


退院してすぐにまた仕事に没頭しました。

私は子どもが産めない。

その事実から目を背けたくて仕事に打ち込みました。

私ってもう結婚とか無理なのかな?

夜、ひとり部屋でそんなことを考えていると涙がポロポロこぼれました。



それでも好きな人ができたんです。
ひとつ年上の会社の先輩でした。
会社に内緒で付き合うようになりました。

半年ほど経った私の誕生日に、京都駅近くのホテルで
ディナーを予約してくれました。
なんとなくプロポーズの予感がした私は、
その前日に自分の身体のことを告白しました。
ちゃんと向き合いたかったからです。

彼の部屋でした。
全て話した時の彼の顔が忘れられません。
お互い黙り込んでしまい、その日は帰りました。

翌日会社の帰り彼に言われました。

「両親に孫の顔を見せてやりたいんだよ。
親孝行がしたいんだ。だから・・・ゴメン。」

そっか、私と結婚したら親不孝になっちゃうんだ。

「君は悪くない。僕のわがままだから。」

ううん、そんなの全然わがままじゃないよ。
あなたの望みは私では叶えられない。
だから仕方ないよ・・・。

でも正直に言われて返って傷つきました。
ほかに好きな人が出来たって言われるほうが気が楽だったかも知れません。

もう幸せな結婚はできないんだ。
女性としての幸せは感じられないのかな?


それでもいい。

私には仕事がある。
仕事を頑張ればいい。

そうしてまた仕事に打ち込みました。

いつしか恋愛を避けるようになっていました。


まわりは幼稚な男ばかりだ。
自分の夢ばかりで、その夢に酔って・・・・。
そんな幼稚な男と付き合うなんてゴメンだ
結婚なんてこっちからお断り!


こうして恋愛しなくなりました。
そうして37歳の誕生日を迎えたんです。

ところが今、私はデンさんとの結婚を考えようとしています。
まだ何も本当のことは言ってないのに・・・。本当の私を見せていないのに・・・。

デンさんと結婚観の話をしたときは子どもの話はでませんでした。
もちろん私からはその話題に触れることはありませんでしたが、
デンさんからも出ませんでした。

でもデンさんは子どもが大好きだと聞いたことはあります。

だったら私じゃ無理だ・・・。

そう考えるとデンさんの家に行けなくなりました。
携帯も出られません。
LINEも返事できません。
デンさんが私の住むマンションまで来たこともありましたが
居留守までしてしまいました・・・。


そしてデンさんから連絡がなくなりました。
私はまた仕事に没頭する生活に戻ったんです。


こんな私をあなたは愛してくれて素直になれた

ある日、外回りをしているとき携帯が鳴りました。
佐竹さんからです。

そうだ、結婚相談所も退会しなきゃ。

そう伝えようと、電話に出ました。

「ひぃさん、今会社の近くなんです。お茶しません?」

会社の打ち合わせでも使う近所のカフェに佐竹さんはいました。 テラス席。

「デンさんとケンカしたんですか?」

「いいえ。」

それしか言えませんでした。

「嫌いになりました?」

「いいえ。」

「お付き合いやめますか。言いにくかったら私から伝えますよ。」

「はい・・・。」

嗚咽をこらえながらだったので、ちゃんと言えませんでした。
涙があとからあとから流れました。

佐竹さんの手が私の肩に触れました。

「デンさんと最初に出会ったときのことを覚えていますか?
お見合いパーティーでしたね。
あの店で、もう一度ひぃさんとお見合いがしたいそうです。
今晩9時。
良かったら行ってあげてください。」

「結婚相手の条件は、

“あなたの理想の人よりもあなたを幸せにしてくれる人“

です。デンさんはひぃさんにとってどんな人ですか?」

そう言って佐竹さんはカフェを出て行きました。


―9時。

迷いましたが結局店に行きました。

このままじゃデンさんに失礼だ。
ちゃんとお別れを伝えなくては。

店内を見渡すと、デンさんが私を見つけて手を振ってくれました。

ゴメンねデンさん、ずっと無視してて。

私は心に決めてデンさんのほうに進みました。

もう・・・、終わりにしよう。

「こんばんは。」

「こんばんは。」

デンさんは緊張していました。

何も話してくれません。

お見合いパーティーのときと同じだ。

思い出して、くすっと笑ってしまいました。
そんな私を見てデンさんも笑いました。

ちょっと体の力が抜けたみたい。

「連絡しなくてごめんなさい。」

「いいよ。何かあった?僕なんかしちゃったかな?」

「ううん。デンさんはなにも悪くない。悪いのは私なの。」

「ひぃちゃんが?僕はなにも怒ってないよ。」

「違うの。私デンさんに隠してたことがあるの。」

「隠してたこと?大事なこと?」

「うん。とても大事なこと。」

「言いたくないなら無理して言わなくてもいいよ。」

「ううん。デンさんにちゃんと言わないとダメなの。」

落ち着つかなくちゃ。
深呼吸。

全て打ち明けました。

「だから結婚できないの。」
「だから付き合うだけ、デンさんの時間が無駄・・・」

デンさんがすっと立ち上がりました。
傍らに来て、私を抱きしめます。

「わかった。
もういい。
じゅうぶん気持ちが伝わったよ。」

「僕さ、子どもたちに相談を受けると
いつもエラそうなこと言ってるんだ。
人生の教訓めいたことをね。」

「でも今ひぃちゃんにはなにもうまいこと言えない。
ダメだな・・・。今言わなくちゃいけないのに。」

「ひぃちゃんと出会ってからひぃちゃんとの人生を想像してた。
結婚生活も想像したよ。いろんなこと考えた。」

「子どもがいることも考えた。」

私は耐えられなくなってうつむいてしまいました。

「今もひぃちゃんの話を聞きながらまた想像してたんだ。
ひぃちゃんが真剣に話してたのに怒るかもかも知れないね。」


「でもダメだった・・・。」

「子どものいない生活は想像ついたんだけど、
ひぃちゃんのいない僕の将来は想像できなかった。」

「君なしの人生なんて考えられそうにないよ。」

また涙がこぼれました。

「ひぃちゃんが結婚したくないって言ってる。
どうしよう、ひぃちゃんがいなくなる、どうしよう・・・」

「そんなことばっかり考えてた。自分勝手でゴメンね。」

ううん。

「ひぃちゃんが子どものことでそんなに悩んでたなんて全然知らなかった。」

「もともと僕恋愛経験が豊富じゃないから女心がわからないんだな。
いい男ならここでうまいこと言えるんだろうけど。」

「かっこつけれらなくて、ゴメン・・・。」

ううん。

「ひぃちゃんさえ僕のそばにいてくれたらそれでいい。」

「それじゃ、ダメかな?」

身体が動きません。

「僕と結婚してください。」

デンさんの肩に顔をうずめました。
涙が止まりませんでした。


その後、結婚生活のルールを決めました。
風呂掃除とか、ゴミ捨ての手伝いとか・・・
私の要望です。
全部デンさんはOKでした。

「はい、守ります。」

「僕からもひとつだけいいかな?」

―悩みは一人で抱え込まないこと。

「必ず僕に相談するように。」

「はい、守ります。」

二人で顔を見合わせました。
思わず笑ってしまいました。

入籍日が決まりました。
私の38回目の誕生日です。
式や新婚旅行は受験シーズンを終えてからに。
来年の春にする予定です。

二人で佐竹さんに報告に行きました。
事務所でスタッフのみんなが迎えてくれました。

「ご結婚おめでとうございます!」

パン、パンとクラッカーの音。
レイをかけてもらいました。

記念撮影。

みんな笑顔でした。
デンさんも私も。

佐竹さんがデンさんとなにか話しています。
これはあとから佐竹さんに教えてもらったことです。

「デンさんよく決断しましたね。」

「僕は毎日言うことを聞かないやんちゃな子どもたちに振り回されてます。
ひぃちゃんにもたまに教室を覗きにおいでって言ってます。
ぼくはひぃちゃんと一緒にいれたらそれでいいんです。」

佐竹さんの瞳にも涙が浮かんでいました。

「お二人とも結婚をあきらめなくて本当に良かったです。」

これが私の結婚までのお話です。
デンさんという最高のパートナーに出会えたことは本当に幸せでした。

そしてもう一人。
カウンセラーの佐竹さんです。

佐竹さんが、高望みしすぎていた私の理想の結婚を
バッサリとダメ出しして私の考え方を変えてくれました。
考え方を変えたから私は結婚に進むことが出来ました。

ここだけの話ですが、デンさんは男前ではありません。
身長もそれほど高くないし。
お給料も特別多いわけではありません。
それに休日が私とぜんぜん合いません!

佐竹さんと会うまでは、私は、私は・・・と自分中心の考えで
相手を探そうと思っていました。

ですが佐竹さんに言われた

“あなたの理想の人よりもあなたを幸せにしてくれる人”

それこそが結婚相手だと教えられ、そして出会えたのがデンさんです。

デンさんは間違いなく私を幸せにしてくれます。
そして”私もデンさんにとってデンさんを幸せにする人”
そうありたいと考えています。

デンさん、私と出会ってくれてありがとう。
これからもよろしくね。

佐竹さん、私と出会ってくれてありがとうございました。
佐竹さんがいなかったら今もきっと前に進めないままでした。

そうそう、無理やり結婚相談所に連れて行ってくれた
おせっかいな(?)友達にもお礼を言わないと(笑)

みなさんのおかげで私は結婚します。
デンさんと一緒に幸せになります。


私がお世話になった結婚相談所は、 ”ヴィーノ” と言います。
感謝の気持ちを込めて最後に宣伝させていただきました。